「アルミってよく聞くけど、よくわからない。誰か簡単に説明してくれないかなぁ」
そんな期待に応えます。
今回はアルミニウムについて紹介します。アルミニウムやアルミニウム合金は、「アルミ」と呼ばれます。実は身近ですよね。アルミ缶やアルミホイル、1円玉もアルミニウムですね。身近なものがもっと楽しくみえてきます。
なお、僕の工学の勉強歴は5年ほど。研究者として生計を立てつつ、サイエンス・エバンジェリストとして科学技術を世間に伝えるための教育活動もしています。こういったバックグラウンドなので、記事の信頼性が担保できるかと思います。
それではみていきいましょう。
身近なアルミニウム
- アルミ缶
- アルミホイル
- 1円玉
- 飛行機
- 自動車
- 金属バット
- iPhoneなどのスマートフォン
- PC
身近なアルミニウムを挙げるとキリがありません。アルミ缶やアルミホイル、一円玉などはすぐに思い浮かぶでしょう。鉄道車両や航空機、自動車には多くのアルミニウムが使用されています。いずれも軽さが重要視されているものですね。アルミニウムは軽量化のために利用されることが多いです。軽いほど燃費が良くなるわけですから、軽量化が重要視されていますよね。他にも野球に使う金属バットも実はアルミニウムです。iPhoneも8以降では筐体がアルミニウム製ですね。やはり日々持ち歩くスマートフォンも軽い方が良いわけです。軽量化したい機器にはアルミニウムが使われています。
アルミニウムの凄いところ
アルミニウムが身近に使われるのはなぜでしょうか。比較的安い金属とはいえ、何か理由があるはずです。
- 軽い
- 加工しやすい
アルミは軽く、加工しやすい特徴があります。例えば、アルミホイルは軽いですし、ちぎったり丸めたりできるほど加工しやすいですから、感覚的にもわかる特徴ですね。
欠点としては、柔らかい(弾性率が低い)ことですね。そのため、強度を保つために工夫が要ります。アルミニウムの高強度化を狙って、合金開発がなされてきました。アルミニウムの軽さや加工のしやすさを維持したまま、高強度化を実現したのがジュラルミンです。
世界を変えた最強の合金「ジュラルミン」
ジュラルミンとはアルミニウム合金の一つです。合金とは、元素を添加して性能を向上させた金属のことです。
ジュラルミンはアルミニウムの軽さや加工のしやすさを維持したまま、高強度化を実現したアルミニウムと銅の合金です。ジュラルミンは1903年にアルフレート・ヴィルムによって発明されました。1903年はライト兄弟が世界初の有人動力飛行に成功した年ですね。ここから、ジュラルミンと飛行機の密接に関わりながら開発が進んでいきます。
飛行機は軽量化が非常に重要です。軽い機体ほど、燃費がよく、高い速度で飛行できるためです。アルミニウム合金は、飛行機に対して最適な材料でした。軽量かつ高強度であるからです。第一次大戦から世界中で戦闘機が開発され、戦地に導入されました。このときに、僅かな機体の重さの違いが、飛行速度の違いとなって戦闘の勝敗に大きく影響しました。そこで各国で新しいジュラルミンの開発がなされました。
日本でも超々ジュラルミンと呼ばれる最強の強度をもつアルミニウム合金が開発されました。
「風立ちぬ」で学ぶ超々ジュラルミン
アルミニウムと銅の合金であるジュラルミンは、軽量で高強度な特徴をもちます。そのため、第一次大戦と第二次大戦を通して多くの戦闘機にジュラルミンが用いられました。
日本でもアルミニウム合金の開発がなされました。そして、住友金属工業で最強の強度をもつ新たなジュラルミンが開発されたのです。1936年に開発されたその新しいジュラルミンは、「超々ジュラルミン」と呼ばれています。このジュラルミンは、日本の代表的な戦闘機である零式艦上戦闘機(零戦)に使用されたのです。
宮崎駿監督作品の「風立ちぬ」は零戦の設計者である堀越二郎が主人公のアニメ映画です。この映画では堀越二郎が零戦の開発をしている様子も描かれています。この超々ジュラルミンも、こっそり映画に登場しています。
住友金属からジュラルミンのサンプルが三菱重工に届くシーンがあります。開発者たちが注目してサンプルを開くシーンからも、当時の航空機開発においてジュラルミン開発が重要であったことがわかると思います。(というか、宮崎駿監督のこだわりがすごいです)
繊維強化プラスチックが凄い
軽さと加工性という特徴をもつアルミニウム、更に強度を高めたジュラルミン。これらは世界中の様々な製品に利用されてきました。飛行機や自動車で使われており、多くの機械に利用されていました。
ところが最近、アルミニウムの立場が脅かされています。それが繊維強化プラスチックです。
アルミニウムよりも軽く、加工性の高い、金属材料はまずありません。しかし、プラスチック(樹脂)はもっと軽く、加工性が良いのです。おにぎりを包むのにアルミホイルがサランラップに移り変わったように、プラスチックが利用されています。
プラスチックもやはり強度が低いという大きな欠点がありましたが、ガラス繊維や炭素繊維をプラスチックに混ぜることで高強度化を実現させた材料がでてきています。炭素繊維は、東レや三菱樹脂などの日本企業が大活躍している分野ですね。
すでに航空機や自動車では、アルミニウムから繊維強化樹脂への転換が始まっており、アルミニウム合金は主役の座からおりています。
最後に
今回はアルミニウムを紹介しました。材料に詳しくなると、日常が少し色づいて豊かになりますね。
他にも材料を紹介した記事があるのでもし良ければみてください。実は、世の中で多く使われている金属材料は、鉄鋼、アルミニウム、銅くらいです。これらを知るだけで、身近なものの材料がかなりわかるようになってきます。
この記事は、以下の文献で学び作成しました。[1]里達雄. アルミニウム大全. Nikkan Kōgyō Shinbunsha, 2016.