『えんとつ町のプペル』で学ぶ科学技術【りかシネマ】

「えんとつ町のプペルを観て感動しました。プペルの世界をもっともっと味わいたいなぁ」

そんな悩みを解消します!

今回は「えんとつ町のプペル」をとおして学ぶ科学技術を紹介します!話題だからという理由で映画を観にいきましたが、良い意味で予想を裏切られて良い作品でした。夢を追う主人公の姿、それを取り巻く人々の葛藤、笑いと感動が詰まっていました。せっかく良い映画ですから、関連する科学技術を学ぶことで映画の価値をさらに高めたいと思い、関連する科学トピックスをまとめてみました!映画をとおして、科学技術を学ぶと記憶にも残りますね。それを抜きにしても「えんとつ町のプペル」はとても良い映画でした。

なお、僕(@おとな理科のおたれ)の物理学の勉強歴は13年ほど。研究者として生計を立てつつ、サイエンス・エバンジェリストとして科学技術を世間に伝えるための教育活動もしています。こういったバックグラウンドなので、記事の信頼性が担保できるかと思います。

それではいきましょう!

えんとつ町のプペルで学ぶ科学技術

「えんとつ町のプペル」はキングコング西野亮廣さん(@nishinoakihiro)の元に集まった豪華な監督やスタッフ、声優陣によって生み出されたアニメ映画です。話題性があることを理由に観にいったのですが、すっかり感動してしまいました。本格的である一方で、キャラクター同士のやりとりのテンポが良く面白く観れることや、まるでMVのような挿入歌をつかった演出なども新鮮に感じる作品でした!

予告編はこちら

「えんとつ町のプペル」で学ぶ「煙突」

「えんとつ町のプペル」のタイトルにもあるとおり、煙突は映画でも重要な存在ですね。せっかくなので、煙突についての知識をつけて作品を観てみましょう!より一層映画を楽しめます。

煙突の役割

古くは焚き火のように薪を燃やしたりしていたとおり、燃料を燃やしていたときには煙がでますよね。また、機関車や船舶にも煙突がついています。特に石炭を燃料とした時代には煙突が必要でした。工場にはもちろん、石炭時代にはそれぞれの家庭にも煙突が据え付けられました。

子どもの頃に家の絵を描くときには「煙突」を必ず描きました。いつの間にかその存在を疑わなくなりましたが、日常生活では煙突をみることはあまりありませんよね。改めて、煙突の役割を確認してみましょう。

  1. 燃焼を安定させる
  2. 有害物質から人間をまもる

煙突の役割の一つ目は、燃焼させることです。煙突の役割は、燃焼を安定させることです。外乱によって燃焼が安定しなくなると困ります。焚き火を思い出せばわかりますが、空気の流れが安定していると焚き火も安定しますよね。

二つ目は、有害物質から人間をまもることです。

煙には多くの有害物質を含んでいます。わかりやすいところでいえば、不完全燃焼した炭素の酸化物である一酸化炭素などです。煙突がなければ室内に有害物質が充満していまいますよね。有害物質を煙突で高くまで送り、広域に拡散させるのが目的です。

煙突の原理「煙突効果」

煙突効果とは、煙突のなかが外気よりも温かい場合に煙突内部で温かい空気が上昇する現象のことです。これは、温かい空気は冷たい空気より密度が低いため煙突内の空気に浮力が生じるためです。

たとえば、煙突効果を利用しているものに、古くはレオナルドダヴィンチの開発した自動肉焼き機というスモークジャックがあります。空気の流れを利用して、肉を焼く機械の動力源を得るという装置です。北京ダックや七面鳥を焼いているお店を見つけたら、スモークジャックを利用しているかチェックしてみましょう!

プペルに登場する煙突は高すぎる!?

映画館で「プペルの世界に登場する煙突は高すぎる」いうような会話が聞こえてきたので、気になって調べてしまいました。ファンタジーの世界を検証しようなんてこと自体が陳腐ですが、おもしろ半分で検証してみました。

ルビッチの身長は1m弱!?
「映画 えんとつ町のプペル」予告編より

ルビッチの身長は100 cm弱のようです。これはゴミ人間プペルの鼻となっている傘の持ち手の長さから見積もりました。傘の持ち手は20cmが一般的なので、その長さとルビッチの身長を比べています。帽子のぶんも合わせていますので、実際はもう少し小さいと思われます。

煙突の高さは 9 m!?
「映画 えんとつ町のプペル」予告編より

少年ルビッチがとても小さくみえますから、煙突が高すぎるように見えるのもわかります。しかし、実際にルビッチの身体から推定すれば煙突の高さは、見えるところだけで9mほどです。まだ見えていない部分もありますが、この数倍の高さがあっても100mもないと思われます。実は100m以上の高さのある煙突も現実の世界にはたくさんあります。「えんとつ町のプペル」に登場する煙突は決して、非現実的な高さではないということですね。

現実にはもっと高い煙突がたくさん!

例えば、日本一高い煙突は東京電力鹿島火力発電所にある231 mもあります。では世界一高い煙突ならどうでしょうか。世界一高い煙突はカザフスタンにあるエキバストス第二発電所で420 mのとても大きい煙突です。

わかりやすく比較してみましょう!京都タワー(131 m) < 日本一の煙突 (231 m) < 東京タワー(333 m) < 世界一の煙突 (420 m)< スカイツリー(634 m)となります。煙突の高さもそうですが、スカイツリーがとても高いことにも驚きですね。

煙突掃除という仕事

煙突の掃除不足は火事の原因になるので、煙突掃除が必要になる訳ですね。産業革命後の18世紀、19世紀には、多くの煙突掃除夫が必要になりました。19世紀が舞台となる映画にも登場していますよね。

ルビッチは「クライミング・ボーイ」
クライミング・ボーイ

少年ルビッチは、煙突掃除人でした。現実の世界でも、多くの孤児の少年が煙突掃除のために雇われ、煙突掃除人として働いていました。クライミング・ボーイとよばれました。

煙突掃除人たちの「すす病」

煙突掃除人たちの仕事には病気がつきものでした。原因不明な病気は「すす病」と呼ばれていました。石炭の副生物であるコールタールが発癌性があることがわかりました。

実はこのコールタールの発癌性についての発見には日本人が貢献しています。山極勝三郎はウサギの耳にコールタールを2年弱も塗布し続けて、1915年に世界初の人為的な皮膚癌発症に成功しました。この偉業は「すす病」の解明だけではなく人為的な発癌に成功した点でも偉業であり、山極さんは何度もノーベル生理医学賞にノミネートされるほどでした。

20世紀に入ってからは、煙突掃除自動機械の隆盛や規制の強化によって、煙突掃除を仕事にする人は減っていきました。

鉱石泥棒スコップはナイカ鉱山にいる!?

「映画 えんとつ町のプペル」予告編より

トロッコに乗ったルビッチとプペルが辿り着いたのは、鉱山でした。鉱山では鉱石泥棒のスコップで出会いました。このシーンでは大きなクリスタルと見られる鉱物があたり一面に広がっていてとても美しいですよね。

メキシコにあるナイカ鉱山
クリスタルの洞窟 - Wikipedia
メキシコのナイカ鉱山のクリスタルの写真。人間の影がとても小さく見えますね。

モデルはメキシコにあるナイカ鉱山ではないでしょうか。美しいクリスタル(水晶)の大きな結晶がたくさん描かれていましたね。現実であの大きさのクリスタルがみられるのはナイカ鉱山しかないのです。モデルが本当にあったかどうかわかりませんが、現実の世界にもこんな素敵な場所があります。

鉱物に興味を持っている僕にとっては、鉱山がでてきてわくわくしてしまいました。また、鉱物泥棒のスコップが良い味のキャラクターで最高でした。鉱物が好きということもあって、僕が一番好きなキャラクターはスコップですね!

Youtubeで解説動画

YouTubeのおとな理科チャンネルでも紹介しています。よかったら動画も参考にしてください!

最後に

今回は「映画 えんとつ町のプペル」にまつわる科学技術について紹介しました!とても楽しいアニメ作品でしたが、学ぶことがたくさんありました。楽しい×学ベるという組み合わせは最高のエンターテイメントですね。

この記事が参考になったり、映画を観るきっかけになれば嬉しいです!映画を観るときには余計なことは考えず楽しんでくださいね!

「映画 えんとつ町のプペル」はとても楽しく感動する作品でした!とてもおすすめです!