ダ・ヴィンチ・コードで科学する【りかシネマ】

「せっかく映画を見るなら、身になる知識がつくような映画を観たいなぁ。ダヴィンチコードが面白かったけど、もっと詳しく知りたいなぁ。」

こんな悩みを解決します。

本記事ではおすすめのダヴィンチコードを紹介したいと思います。分野に分けて紹介したいと思います。今回は洋画に絞って紹介したいと思います。

なお、僕は研究者として生計を立てつつ、サイエンス・エバンジェリストとして科学技術を世間に伝えるための教育活動もしています。そして実は年間50本近くの映画をみていますので、記事の信頼性が担保できるかと思います。

それではいきましょう。

科学知識が謎をとく鍵になる

フィボナッチ数列

1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55…と続く数列はフィボナッチ数列として知られています。この数列は、どの数字も直前の2つの数を足した数になっているような数列です。

a_n = a_{n-2} + a_{n-1}, a_1 = 1, a_2 = 1

これらの数はフィボナッチ数と呼ばれます。自然界に多く現れる数です。例えば、花びらの枚数はフィボナッチ数であることが多いです。そして、フィボナッチ数列と黄金比(近似値は1:1.618)との関係も有名です。美しい比と言われる黄金比ですが、前後のフィボナッチ数の比は黄金比に近づいていきます。

8/5 = 1.6, 13/8 = 1.625, 21/13 = 1.615, 34/21 = 1.619, 55/34 = 1.6177

身の回りにある、名刺やカード、ディスプレイの比は黄金比になっています。そして、この本のタイトルにもあるレオナルド・ダ・ヴィンチは、黄金数を発見していたという記録が残っているのです。

1: \frac{1+\sqrt{5}}{2} (黄金比)

レオナルド・ダ・ヴィンチ

15世紀のイタリアで活躍したレオナルド・ダ・ヴィンチはヴィンチ村に生まれた天才です。誰もが知る「モナリザ」や「最後の晩餐」など美術に大きな影響を残しています。万能の天才とも呼ばれており、科学も精通していたため、現実的な描画を好んだと言われています。科学、技術にも精通していたため、科学史にもよく登場します。

モナリザ」は、代表作ですね。今も謎に包まれているモナリザです。ルーブル美術館の広間に飾られていました。僕もルーブル美術館にいったときに観ました。

岩窟の聖母」は、聖アンナ、聖母マリア、幼いキリスト、幼いヨハネが描かれている。実は、ルーブル版、ロンドン版の2点が存在している。ほとんど同じ構成だが、はじめに描かれたルーブル版に対して、ロンドン版には天使の輪っかや羽根が加えられている。2点存在する理由は諸説あるが、制作依頼に応じてルーブル版を描いたが、のちに何らかの理由で代替品としてロンドン版を制作したというものである。

最後の晩餐」は、この作品でかなり重要視されている壁画です。キリストが12人の使徒と最後の晩餐をしているときに「この中の一人が私を裏切る」と予言したシーンを描いた作品です。ユダがキリストと同じ皿に手を伸ばしている様子もわかります。この映画では、キリストの横にいる人物が実はマグダラのマリアであるという説が紹介されています。一般にはヨハネであると言われていますが、映画を観てからはマグダラのマリアにしか見えなくなってしまいました。

パリ子午線(ローズライン)

パリ子午線という、パリ天文台を通る子午線があります。通称「ローズライン」であり、映画でも謎解きの重要な役割を担っています。

19世紀後半(1884年)に、イギリスのグリニッジ天文台を通るグリニッジ子午線が本初子午線と定められましたが、その際に争っていたのがパリ子午線です。この時代に描かれた小説「海底二万マイル」でもこの争いが描かれているそうです。

ちなみに、パリ子午線にはメダルが約100m置きに設置されていますが、メダルには「ARAGO」と天文学者フランソワ・アラゴの名前が書かれています。パリ経度を高い精度で計算した功績が残っています。映画の中でもARAGOの文字が登場しています。

アイザック・ニュートン

この物語の鍵として、アイザック・ニュートン(1642-1727)も登場します。「プリンキピア(1687)」を出版し、古典力学を完成させた天才です。運動の法則が発見されています。20世紀の天才であるアインシュタインもニュートンのポスターを飾っていたほどです。

映画では、宗教家としての一面がクローズアップされていますね。実際に、熱心なキリスト教徒だったことが知られています。「プリンキピア」でも物理体系をつくったのは万能の主だと書かれているそうです。

実際にニュートンが埋葬されているウェストミンスター寺院が映画で登場します。ちなみに、科学者だけでもニュートン、ラザフォード、ウィリアム・トムソン、マクスウェル、JJトムソン、ダーウィン、ホーキングといった著名人が埋葬されています。

クリプテックス

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この小説家のダン・ブラウンが考案した秘密文書をしまうカプセルです。無理に開けようとすると、ビネガーが溶け出し、パピルスを溶かしてしまうという説明があります。これは、酸がインクの油分を溶かしてしまうため、情報が失われるということでしょう。また、水溶紙のように劣化したパピルスが液体に溶けていくという効果もあるでしょう。

世界中で検証されているようで、実際には上手く溶かすことは難しいようです。

スコトーマ現象

スコトーマとは、固定観念により重要な物事の陰に隠れたスコトーマ(心理的盲点)のことです。

宗教についても

オプス・デイ…キリスト教のローマ・カトリック教会の実在する一組織です。この映画の中では、オプス・デイが、殺し屋のシラスを送り込んだりしており、悪役として描かれている。求心力を維持するためにシオン修道会が隠している秘密を消し去りたいと考えている。

シオン修道会…都市伝説的な秘密結社である。マグダラのマリアがキリストの子供である女児を生んだ。男性を権威の根源としているカトリック教会は魔女狩り(15〜18世紀に実際にあった)を行ない、キリストの血を絶つように動いた。百合の紋章はシオン修道会の印とされている。歴史的な史実である十字軍、テンプル騎士団などである。ちなみに著者のダンブラウンは以下のことを「事実」として小説を書いている。

シオン修道会は、1099年に設立されたヨーロッパの秘密結社であり、実在する組織である。1975年、パリの国立図書館が『秘密文書』として知られる資料を発見し、シオン修道会の会員多数の名が明らかになった。そこには、サー・アイザック・ニュートン、ボッティチェルリ、ヴィクトル・ユゴー、そしてレオナルド・ダ・ヴィンチらの名前が含まれている。

アレクサンダー・ポープ

アレクサンダー・ポープは詩人です。クリプテックスを開ける手がかりを解読するために登場します。ヒントはこちら。

教皇(A Pope)の葬った騎士(Knight)がロンドンに眠る
彼の者の労苦の果は神の怒りを被る
その墓を飾るべき球体を探し求めよ
それは薔薇の肉と種宿る胎とを表す

A Popeがアレクサンダー・ポープだと気づき、Knight はニュートンのことだとわかったのです。ニュートンは生前、女王からナイトの称号をもらっていました。自然科学の業績でナイトの称号を得たのはニュートンが最初だったそうです。アレクサンダー・ポープはニュートンを葬っており、碑銘を送っているのです。ポープの書いた碑銘は《神が言った「ニュートン出でよ」するとすべてが明るくなった(God said “Let Newton be” and all was light.)》

ちなみに、イギリス臣民でナイトに叙任された男性は Sir (サー)と敬称をつけるためニュートンの本名はサー・アイザック・ニュートン(Sir Isaac Newton)です。

最後に

映画として完成度が非常に高いので、観ていて本当に楽しいです。背景知識を固めることで更にこの映画を楽しむことができます。

宗教・科学技術・歴史的な背景を知っておくと本当に楽しめる作品です。既に観たことがある方も、もう一度観ても面白いかもしれません。

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ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)

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映画では第1作目が「ダヴィンチコード」、第2作目が「天使と悪魔」です。小説版では「天使と悪魔」が第1作目なのでご注意ください。

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