簡単に有限要素法がわかる【FEM】

「有限要素法って聞いたことあるけれど、よくわからないなぁ。簡単に有限要素法について教えてくれないかなぁ」

そんな悩みを解決します。

本記事では、有限要素法を扱います。有限要素法を利用している人はたくさんいるでしょう。有限要素法を理解しない限り、解析は本当の意味で理解できません。一方でマスターすれば、解析の面白さがわかるもの。

なお、僕は研究者として生計を立てつつ、サイエンス・エバンジェリストとして科学技術を世間に伝えるための教育活動もしています。こういったバックグラウンドなので、記事の信頼性が担保できるかと思います。

というわけでさっそく見ていきましょう。

CAEのツールの代表的なツール

CAEとはcomputer aided engineeringの略で、現代ではCAEを駆使した設計がエンジニアのトレンドになっています。有限要素法による解析ツールは、CAEの代表的なツールとなっています。

有限要素法・FEM・有限要素解析・FEA

有限要素法は、Finite Element Methodといい「FEM」と呼ばれることも多いです。有限要素法を用いた解析を「有限要素解析(FEA)」といいます。エンジニアの会話の中では、どれも同じ意味で使われているようです。

1956年に米国で誕生

1956年にボーイング社と大学の共同研究で開発された手法と考えられています。ボーイング社の社員であったTurnerらが論文を発表しています。ボーイング社といえば航空機業界で世界一位の企業ですよね。航空機の空力弾性などの解析に利用するために考案されたようです。彼らは2次元要素を初めて扱い、直接剛性法という計算方法を確立しました。剛性方程式に行列を導入したことが非常に大きなことです。

その後、半導体業界の躍進によって、コンピュータの計算能力が上がったことで大きく普及したようです。

有限要素法は「分割して解く」方法

有限要素法では、解析したい対象や空間を要素(Element)に区切ります。要素同士は節点(node)で繋がります。

それぞれの要素で満たすべき方程式が与えられます。この方程式は「支配方程式」と呼ばれています。

要素の数だけ方程式がありますが、節点は共有しています。要素に囲まれていない点には、境界条件が与えられます。解析対象の外側の空気領域も計算対象ですから、計算領域の外側は空気であることが多いです。また、要素が共有している節点にも特別な方程式を与えることもあります。

いずれにせよ、要素の数だけ方程式があるのですが、未知数は方程式の数よりも少ないため、解くことができる連立方程式です。行列演算を駆使して、計算するわけです。

解析のすべては支配方程式と境界条件

ここからわかるように、支配方程式と境界条件を与えてやれば、計算が可能なわけです。境界条件をどのように与えてやるかが解析のポイントになります。

支配方程式は、解析の種類によって変わります。構造解析、伝熱解析、電磁界解析、流体解析はそれぞれ支配方程式が違います。

コツとなるのはメッシュの切り方

解析対象を要素に分割することを「メッシュをきる」といいます。どのくらいの要素に分割するかが、解析技術のポイントになります。

分割数が多いほど要素が小さくなるため、より精度の高い解析が可能になります。一方で、分割数が多いほど、解くべき方程式の数が増えるため、解析時間が長くなります。

分割の仕方は自由です。ここが、解析の腕の見せどころです。有限要素解析では、一部の要素を小さくして一部の要素は大きくすることも可能です。つまり、影響が大きそうな部分は要素を小さくして、それ以外の要素は大きくするなどできます。どこのパーツについてメッシュを細かくし(要素を小さく、分割数を多く)、どこのパーツについてメッシュを粗くするか(要素を大きく、分割数を小さく)するかというのも解析のポイントになります。

対称性を利用する

解析のポイントはまだまだあります。対称性を利用することです。例えば、正方形の対象を解析するときに、ある1つの角の解析結果は他の3つの角と同じ結果になるはずです。4つの角とその周りでは同じ計算がされていることになります。結果を知っているのに、同じ計算を何度もするというのは勿体無いですよね。

そこで対称性が利用されます。対象面を決めて、そこでの境界条件を決めます。ある物理量のベクトルが境界に対して直交する境界(自然境界)やある物理量のベクトルが境界に対して平行になる境界(対象境界)などの条件をつけます。

対称性が高いほど、計算は省略できることになります。これも解析をおこなう際に計算時間を大幅に短縮させるコツです。

最後に

有限要素法について説明しました。結局のところ、要素に分割して、支配方程式を連立して解くという方法になります。

支配方程式によって、構造解析、伝熱解析、電磁界解析、流体解析などといったあらゆる物理現象を扱える方法です。そのため、幅広い領域で利用されている計算手法となっています。

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