リサイクルといってアルミ缶を思い浮かべる人は多いだろう。燃えるごみ、燃えないゴミ、ペットボトル、そして、アルミ缶。
アルミ缶とは、その名の通りアルミニウムでできている缶である。スチール缶とともに、多くの飲料に用いられており、日々お世話になっているのはいうまでもないだろう。
これまでの30年の人生、アルミ缶回収ボックスに空き缶を投じてきた。言われれるがまま。何も考えず。そして、心に浮かぶ…どれほどの意味があるのだろうか。
そう思ったら、調べるしかない。そして、手中の缶にどれほどの価値があるか知ることになったのだ。
日本におけるアルミ缶の回収率は90パーセント
なんと日本において、アルミ缶の回収率は90%にも達している。このうち60%がアルミ缶として再利用されている。これらは諸外国に比べても高く、日本が誇れる数字である。
確かに、自動販売機や駅やコンビニのゴミ捨て場にも必ずアルミ缶回収容器が設けられている。90パーセント…なるほど、納得の数字だ。
電力97%の節約!アルミ缶のリサイクルって価値が高い
新しいアルミニウムをつくるとき、多くの電力が必要になる。
新しく造られる金属を「新地金」という。
電解精錬という電気分解を利用した手法が用いられる。アルミニウムを溶かした溶液に、高い電圧をかけることで、アルミニウムを分離させるのだ。新地金をつくるには、原料と電力がたくさん必要になるのだ。原料はボーキサイトである。ボーキサイトは、酸化アルミニウムである。セラミックとしてはアルミナとも言われる。ボーキサイトの原産国はオーストラリアや中国などが有名だが、日本では産出されない。そのため、日本はアルミニウムの原料を輸入に頼っている。
一方で、リサイクルによって造られる金属を「再生地金」という。
スクラップからアルミニウムを製造するのだが、エコロジーでありエコノミーでもある非常にエコな製造方法だ。新地金に比べて、消費エネルギーが3%程度で済む。原料はスクラップであり、原料コストが下がる。さらに必要な電力が3%で済むということなのだ(つまり97%も電力節減される)。原料費も、生産コストも下がるのだ。
日本においては、新地金50%、再生地金が50%である。諸外国に比べて再生地金の割合が高い。アルミニウムの資源がない国だからこそ、リサイクルにより再生地金の割合をさらに増やしているのである。
最近は、再生地金の質の向上というのも技術的な課題だそうだ。ぜひ、技術を発展させていき、日本がアルミニウムのリサイクル先進国になってほしいなぁ。
20XX年、大量の自動車スクラップが生まれる
今後、自動車スクラップが増えるといわれている。少し前の自動車では、軽量化のためアルミニウム合金をボディの材料に使っていたのだ。そのため、これから多くの自動車のスクラップが出てくることが予想される。
自動車からアルミニウムのスクラップをいかに高い効率で質良く取り出せるように、技術開発が急ピッチで進められているそうだ。
最後に
アルミ缶を捨てるとき、ふと、アルミニウムのマクロな流れを意識したいと思う。そうすれば、ちょっと心が豊かになる気がするのだ。この手中の缶が、日本の資源となるのだと。
この記事は、以下の文献を基に作成しました。[1]里達雄. アルミニウム大全. Nikkan Kōgyō Shinbunsha, 2016.
文献紹介
アルミニウムを勉強するための入門書。用語をイチから説明しているので読み易い。専門書の部類なのでややお値段がはるが、お勧めの入門書です!