簡単にマクスウェル方程式がわかる【電磁気】

「マクスウェル方程式って聞いたことあるけれど、よくわからないなぁ。電磁気学を完成させたっていう話を聞いたことがある程度。簡単にマクスウェル方程式について教えてくれないかなぁ」

そんな悩みを解決します。

本記事では、マクスウェル方程式を扱います。マクスウェル方程式を理解しない見渡さない限り、電磁気学はわかりません。一方でマクスウェル方程式をマスターすれば、電磁気学のすべての式はこの4つに纏まるという、学問の面白さがわかるもの。

なお、僕の物理学の勉強歴は12年ほど。
研究者として生計を立てつつ、サイエンス・エバンジェリストとして科学技術を世間に伝えるための教育活動もしています。こういったバックグラウンドなので、記事の信頼性が担保できるかと思います。

というわけでさっそく見ていきましょう。

といっても、今回は本を紹介します。紹介する本はこちらです。

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マクスウェル方程式を学ぶのに最適な本だと思います。というのも、マクスウェル方程式ってその意味がわかりづらいんですよね。

この本では、マクスウェル方程式のそれぞれの式は、既に高校物理で習った公式たちばかりであることを教えてくれます。

まずは目次から確認してみましょう。

目次から学ぶ

第1部 エレキの謎を探る旅

  1 平賀源内の挑戦
  2 クーロンの秘密兵器
  3 ファラデーの登場
  4 もう一人の天才、アンペール
  5 最後の壁、電磁誘導

第2部 電磁気学の統合

  1 マクスウェルの方程式
  2 電子のベール 
  3 無限のバトンリレー
  4 エレクトロニクスへ

第3部 旅の終わりに

この本は一般向けに書かれた本であるため、数式が少ないです。歴史を交えて語られている本であるため、通常の電磁気学ではあまり主役にならないような話が添えられています。たとえば、始まりは江戸時代の発明家である平賀源内です。正直、日本の発明家を文脈に入れる必要性はないが、興味のきっかけになる話がふんだんに入っています。正直、電磁気学を学ぶうえでは飛ばして読んでも良いのですが、平賀源内の経歴や当時の日本の様子について詳しく書かれているので、なかなか面白いです。

大事な流れは、ここです。

第1部 エレキの謎を探る旅
  2 クーロンの秘密兵器
  3 ファラデーの登場
  4 もう一人の天才、アンペール
  5 最後の壁、電磁誘導

第2部 電磁気学の統合

  1 マクスウェルの方程式

通常の電磁気学の教科書の多くはクーロンの法則から始まり、基盤となった実験的な発見を基に各法則を挙げ、最後にマクスウェル方程式へ統合される歴史をとります。その文脈はここに挙げた1部の途中〜2部の始めまでです。

この本で強調されていることは、マクスウェル方程式それぞれは難しくないぞということです。

実際にマクスウェル方程式をみてみましょう。

マクスウェル方程式

マクスウェル方程式は4つの方程式ですが、それぞれ名前がついています。その覚え方はガウ・ガウ・ファラ・アンマ(すいません。センスがありませんでした)です。マクスウェル方程式のそれぞれを確認してみましょう。

電場のガウスの法則

\int E dS = \frac{1}{\epsilon}\int\rho dv

磁場のガウスの法則

\int B dS = 0

ファラデーの電磁誘導の法則

\oint_c E dr = – \frac{d}{dt}\int Bdv

アンペール・マクスウェルの法則

\oint_c B dr = \mu \left( \int jdv – \epsilon \frac{d}{dt} \int Edv \right)

一見、よくわからない方程式がいくつも並んでいますよね。実は、これらの方程式は高校物理で学ぶ物理の公式から出てきます。

式の出どころを確認してみましょう。

  1. 電場のガウスの法則…「クーロンの法則」
  2. 磁場のガウスの法則…モノポールは存在しない
  3. ファラデーの電磁誘導の法則…「ファラデーの電磁誘導の法則」
  4. アンペール・マクスウェルの法則…「アンペールの法則」

この本の醍醐味はここです。

マクスウェル方程式は身近な方程式だと感じられるようになることが、この本を読む最大の利点です。

いずれも高校物理から出発すると、マクスウェル方程式の一つ一つが決して難しくはないことがわかります。大学ですでに学んでいる人がいると微分形、積分形のマクスウェル方程式があると思いますが、この本でのゴールは積分形のマクスウェル方程式です。

さて、最強の方程式といわれる所以をみてみましょう。

電磁気学の全てはマクスウェル方程式に

マクスウェル方程式は、電磁気学の全てを表すことのできる方程式なのです。ですから、電磁気学で学ぶ公式はマクスウェル方程式から導くことができます。

例として、電場のガウスの法則を見覚えのある形に変えてみましょう。

\int E dS = \frac{1}{\epsilon}\int\rho dv

ある点電荷qの周りにある半径rの球の空間で積分をしてみましょう。ここで、半径rの球の表面積が4πr^2であることに注意してください。また、球内には点電荷qだけがあるので、電荷密度を球の体積積分した値がqになることにも注意してください。

4\pi r^2 \cdot E = \frac{q}{\epsilon}
E = \frac{1}{4\pi\epsilon} \frac{q}{r^2} = k \frac{q}{r^2}

こうして、高校生で習う電場の式が導かれます。このようにしてマクスウェル方程式は電磁気学の公式を包括している方程式なのです。

電磁波の予言

実はマクスウェル方程式は、電磁波を予言した方程式です。電磁波とは、光のことですね。波長によって、赤外線や可視光線、X線などと呼び分けられます。電磁波という名のとおり、「電」場と「磁」場の波なのです。

3つ目のファラデーの電磁誘導の法則、4つ目のアンペール・マクスウェルの法則を眺めてみましょう。前者は磁場の変化が電場を生むことを表し、後者は電場の変化が磁場を生むことが表されています。磁場の変化→電場の変化→磁場の変化・・・と無限に続きます。これは、電磁波と呼ばれる電場と磁場の波が伝搬していくことを示した式です。

ファラデーの電磁誘導の法則(磁場Bの変化が電場Eを生むことを示している)

\oint_c E dr = – \frac{d}{dt}\int Bdv

アンペール・マクスウェルの法則(電場Eの変化が磁場Bを生むことを示している)

\oint_c B dr = \mu \left( \int jdv – \epsilon \frac{d}{dt} \int Edv \right)

最後の一手はローレンツ力

実はマクスウェル方程式に含まれていない電磁気学の重要な法則があります。ローレンツ力です。アンペールの力F=IBlもこの式から導き出されますね。

ローレンツ力

F = qvB

マクスウェル方程式にこの方程式を一つ加えた5つの式で電磁気学が完成しているのです。ローレンツ力がマクスウェル方程式に入っていないということは忘れられがちなので、ご注意を。

最後に

高校数学から学べるマクスウェル方程式ということで、全体を見渡しました。全体像が掴めるだけで、より深い物理を学ぶきっかけになれば幸いです。

ベクトル解析を使って、微分方程式を解いて…というのもいいですが、ひとまず簡単に理解すると、親しみ深くマクスウェル方程式と付き合っていけます。

ではまた!