簡単にわかる「標準理論」の基礎【素粒子】

「素粒子って聞いたことあるけれど、よくわからないなぁ。標準モデルとか標準理論というのも聞いたことがある程度。簡単に素粒子学について教えてくれないかなぁ」

そんな悩みを解決します。

本記事では、素粒子学の基本となる標準理論を紹介します。標準理論を知らないと、最先端の物理が見えてきません。一方で、素粒子学を知ると、物理という学問の面白さがわかるもの。

なお、僕の物理学の勉強歴は12年ほど。
研究者として生計を立てつつ、サイエンス・エバンジェリストとして科学技術を世間に伝えるための教育活動もしています。こういったバックグラウンドなので、記事の信頼性が担保できるかと思います。

というわけでさっそく見ていきましょう。

標準理論は20世紀の人類の到達点

標準理論というのは現代素粒子物理学の基本的な枠組みです。1970年代半ばに体系化された「20世紀の物理学の到達点」です。3つの力の法則が表現されます。

3つの力とは、「電磁気力」、「弱い力」、「強い力」の3つです。これら力によって引き起こされる素粒子反応の法則が標準理論なのですが、実験装置を用いて標準理論を構成する素粒子が確認されました。その装置こそが加速器です。

加速器とは、粒子を高速にするための装置で、素粒子物理学に大きく貢献してきました。最近では、2012年に世界最大の加速器CERNのLHCで、ヒッグス粒子が発見されたことが話題でしたね。

標準理論に現れる素粒子

標準理論は、フェルミ粒子とゲージ粒子、そしてヒッグス粒子で構成されます。

物質を構成するのはフェルミ粒子です。クオーク(6種類)、レプトン(6種類)があります。力を媒介するのは4つのゲージ粒子です。強い力のグルーオン、電磁気力のフォトン、弱い力のWボソン、Zボソンがあります。そして、これらの粒子を引き止めているヒッグス粒子です。

ヒッグス粒子が最後に発見され、すべての粒子が発見されました。

標準理論には問題がある

標準理論の不完全性が指摘されています。問題を明らかにしたのは、 天文学です。

標準理論の問題の一つに、ダークマターやダークエネルギーを説明できないという問題があります。 ダークマターやダークエネルギーは、日本語では暗黒物質、暗黒エネルギーと呼ばれる厨二病ゴコロをくすぐられる名前のものです。いずれも「よくわからない」という意味で「暗黒(ダーク)」という単語が使われています。

天文学はこれらダークマターとダークエネルギーの存在を明らかにしました。銀河の回転速度は非常に早く、太陽系が遥か彼方に飛んでいかないためには、星々の質量だけでは足りず、暗黒物質の存在が必要でした。また、重力レンズ効果の観測もダークマーターの存在を説明します。 また、ダークエネルギーの存在も超新星や宇宙背景放射やバリオン音響振動によって明らかになりました。

問題は、標準理論では、ダークマターもダークエネルギーも説明できないということです。

また、もっと先には、重力の統一という課題もあります。現在の標準理論は3つの力を扱えていますが、重力が扱えていないのです。大統一理論という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。すべての力を統一した理論が、物理学者の目標というわけです。有望株としては、弦理論に超対称性を仮定した超弦理論という理論があります。

標準理論を超えて〜Beyond the Standard Model〜

標準モデルに問題があることはわかりましたが、もちろん物理学者たちはその先を考えています。

更なる理論として、超対称性理論というものがあります。厨二病のように感じるのは気のせいです。超対称性理論は、標準理論の発展型理論といえます。この理論では、更なる素粒子である超対称性粒子(SUSY 粒子)が存在するといわれています。専門的にいえば、超対称性粒子とは標準理論の粒子のスピンが1/2だけずれた粒子です。たとえば、ダークマターの答えがこの超対称性粒子の一つであるニュートラリーノでないかと考えられています。

しかし、超対称性理論というのもまだまだで、既存の加速器で発見されても良いはずで、理論の未熟さが指摘されているようです。

そう、標準理論の先へ、すでに人類の旅は始まっているのです。

最後に

今回は素粒子学について紹介しました。

素粒子学の歴史をまとめた面白い本があるので紹介させてください。タイトルは「量子力学の発見」という本です。

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近年の物理学の展開を知るには最適な本です。「詩人のための量子力学」の著書でありノーベル物理学賞受賞者であるレオン・レーダーマンの作品です。最初は、アメリカ政府への愚痴から入りますが、魅力的な文書が好奇心を擽りながら、どんどん物理学の深く深くへ引っ張られていきます。いかに直感に反した現象がこの世界にあるか、人類がどのようにそれを発見してきたのかがわかる良本です。数式なしで素粒子学の魅力がわかります。