「産業革命って結局どんなことが発明されたの?蒸気機関の発明だっけ?誰か技術的な視点で産業革命を教えて」
そんな悩みを解決します。
今回は産業革命について紹介します。18世紀から19世紀に成し遂げられた技術的な革命です。これにより人類の生活は一変し、社会にも大きなインパクトを与えました。当時、イギリスを中心として起きた技術革命です。そのため、技術の多くはイギリスで発明されました。今回は、産業革命ではどんな発明があったのか、そして世界にどんな影響を及ぼしたのかをみていきましょう。
僕の物理学の勉強歴は12年ほど。研究者として生計を立てつつ、サイエンス・エバンジェリストとして科学技術を世間に伝えるための教育活動もしています。男子と自称していいのかは微妙ですが、多めにみてください。
物理といえば自然現象の法則を探求する学問です。人間社会とは切り離された学問といえるでしょう。そんな僕が近代史に興味が湧き始めた理由は、科学史を学び始めたことです。歴史を知っていると、科学や技術を学ぶときにより一層の楽しみを感じることができます。
今回はそのきっかけをお話ししたいと思います。
蒸気機関の発明
1769年にジェームズ・ワットが開発した蒸気機関の新方式が効率を向上させたことで産業革命の大きなきっかけとなったといわれています。
適用されたのが蒸気機関船や蒸気機関車です。
蒸気機関を船に適応したのはロバート・フルトンです。当時は帆船が一般的で蒸気機関でまともに動く船はなかったので「フルトンの愚行」とまでいわれていたそうです。しかし、公開実験で「クラーモント」という蒸気機関船をハドソン川で走行に成功したことで、天候に影響されず利用できる蒸気機関船は広く普及されることになります。
蒸気機関車はリチャード・トレビシックによって開発されました。ペナダレン製鉄所で蒸気機関。その後、ジョージ・スチーブンソンが公共鉄道の開発を成功させたため、鉄道が生まれます。スチーブンソンは「鉄道の父」と呼ばれます。
実は産業革命は蒸気機関の発明だけではないのです。もう少し深く産業革命を調べてみましょう。きっかけの一つは紡績機でした。
紡績機の自動化
紡績機の改良というのが産業革命のきっかけです。1733年のジョン・ケイの「飛杼」の発明です。紡績機の一部品である杼(シャトル)は横の糸を折るための道具です。これを片手で紐を引くと自動的に通る工夫をしたものが飛杼です。産業革命以前では、杼を通す作業を担当する助手が必要でしたが、これを片手で操作できるようになりました。当時は紡績工がたくさん失業したために発明者のジョン・ケイは相当恨まれたそうです。
このような紡績機の改良は綿織物生産量を大幅に改善し、綿織物をイギリスの主力産業にしたのです。
日本にも伝わった産業革命の余波
群馬にある富岡製糸場は、産業革命時代に生み出された世界最先端の技術が明治維新によって日本へ取り入れらたことで誕生した製糸場です。1858年に横浜港の開港、1868年の明治維新、そして富岡製糸場の操業開始が1872年です。開港後の日本の重要な輸出品でした。日本からの輸出に中国から輸出も加え、生糸の国際価格の暴落を引き起こしました。日本は、20世紀初めには生糸(繭糸を数本まとめたもの)の生産量が世界一になりますが、20年代の化学繊維の登場や世界恐慌によって生糸産業は徐々に低迷していきます。
トヨタの原点は自動織機だったというのも有名な話ですね。日本の工業にも大きな影響を及ぼしていることがわかると思います。
製鉄の革命「コークス高炉法」
製鉄技術の大幅な向上が産業革命を膨れ上がらせたといっても過言ありません。18世紀前半に、エイブラハム・ダービー親子が鉄鋼石にコークスを混ぜて高炉という大きな炉をつかう「コークス高炉法」という技術を開発し、酸化鉄を還元する製銑技術を確立しました。さらに1856年にベッセマーが転炉を発明し、炭素などの不純物を除去する製鋼技術を確立します。
多くの機械では金属材料が必要になります。製鉄技術の発展により、蒸気機関車も「鉄道」というくらいで鉄を利用します。
鉄の利用は軍備拡大にも繋がります。鉄血宰相として知られるドイツのビスマルクは「問題は鉄(軍備)と血(兵隊)によって解決される」という趣旨の鉄血演説を残しています。デンマーク、オーストリア、フランスとの戦争で、問題であったドイツ統一を解決し、ドイツ帝国を完成させることになります。
物理への余波
量子力学の誕生のきっかけづくりに産業革命の影響があります。ドイツのビスマルク政権で鉄の生産がなされていたことがわかっていたといいました。そのドイツで量子力学が始まります。製鉄過程で高温になった鉄は明るく光ります。この光りの色を詳細に調べていたところ、エネルギー的にとびとびの光りが発光していることをプランクが発見しました。
最後に
産業革命は、鉄という材料製造の技術、蒸気機関という動力源の開発、これにより紡績機や蒸気機関船、蒸気機関車などが登場したことでイギリスが大きな利益を得る時代です。