簡単に鉄鋼がわかる【はがね】

「鋼(はがね)ってよく聞くけど、よくわからない。誰か簡単に説明してくれないかなぁ」

そんな期待に応えます。

今回は鉄鋼について紹介します。

鉄鋼は、鋼(はがね)とも呼ばれます。実は身近ですよね。たとえば、鋼の錬金術師という漫画もあります。ゲームのドラゴンクエストシリーズには「はがねのつるぎ」、ポケットモンスターシリーズには「はがねタイプ」などなどがでてきますよね。なんとなく、「硬いもの」という印象があります。

なお、僕の工学の勉強歴は5年ほど。研究者として生計を立てつつ、サイエンス・エバンジェリストとして科学技術を世間に伝えるための教育活動もしています。こういったバックグラウンドなので、記事の信頼性が担保できるかと思います。

それではみていきいましょう。

鉄鋼は、鉄に炭素が混ざった合金

鋼は、鉄鋼とも呼ばれる金属材料である。鉄に炭素を混ぜた合金です。日常生活で「鉄」とよんでいるものの殆どは、この鉄鋼である。

鉄鋼は、硬くて丈夫で安いという特徴をもっています。炭素鋼として有名な S45Cはビッカース硬さは200 HV程度です。(これは硬いのですが、ベアリングなどの部品でよく使われるマルテンサイト系ステンレス(SUS404C)では600 HVですので、まだまだ上はありますね。)

硬くて丈夫で安い鉄鋼は多くの構造部材につかわれる。たとえば、鉄筋コンクリートの「鉄」は鋼です。また、スチール缶の「スチール」も鋼なのです。ここからも日常生活で「鉄」といっている殆どのものが鋼であることがわかるわけです。

炭素鋼、ステンレス鋼も鉄鋼

鋼のなかにも種類があって、炭素だけのものを炭素鋼といいます。S45Cなどが有名な材料です。炭素以外の混ぜものがあると、合金鋼と呼ばれます。また、クロムを加えたステンレス鋼も鋼の一種です。

ステンレス鋼は「錆びにくい鉄鋼」という意味です。そもそも名前の由来も、ステイン(stain:汚れ)+レス(less:なし)なのです。錆びにくい特徴は、重宝されるため、ステンレス鋼も多くの製品で使われます。階段の手すり、歩道の柵、電車の網棚などがあります。実は、いつも視界の中にステンレスがあるほど、街中に溢れていることがわかります。まだまだ、蛇口、シンク、ハサミ、ボルトなどもステンレス鋼です。

建設材、自動車、船舶に大量の鉄が使われる

主に鉄鋼が利用されるのは建設材や自動車、船舶などの産業です。それぞれ、建設材が35%、自動車30%、船舶18%です。世界的には年間15億トンという大量の鉄が生産されているのですが、大量すぎてあまり直感的ではないですよね。日本でも年間1億トンの鉄がつくられているそうです。

製鉄といえばタタラ場?

製鉄とは、鉄鋼をつくることです。主に製銑、製鋼、圧延のステップに分かれます。第1ステップの製銑では、原料の鉄鋼石を銑鉄に還元します(Fe203→Fe)。高炉という高さ100mほどもする炉を使って、鉄鉱石の酸素を除去します。還元剤にはコークスを使います。熱風炉というエネルギー還元装置で。第2ステップの製鋼では、銑鉄から炭素などの不純物を除去して鋼鉄にします。第3ステップでは圧延によって、形を整えます。熱間圧延と冷間圧延があります。熱間圧延では、高温でロールを通すため、気泡除去や均質化に適していますが、表面は粗く寸法精度も悪いです。冷間圧延では、室温でロールを通すため、表面が平滑になり寸法精度も良いという利点があります。冷間圧延と熱処理を組み合わせて、結晶組成を改善する取り組みも成されますね。

人類で最も早く製鉄技術を手に入れたのは、メソポタミア文明のヒッタイトです。紀元前14世紀ですからはるか昔のことですね。ちなみに最も古くから使われている金属は青銅であり、紀元前35世紀ごろから利用されています。大きく産業化が進むのは、産業革命の頃です。18世紀ではイギリスを中心に鉄鋼の品質向上が成され、19世紀には転炉法という技術が開発されて大量生産が可能になりました。鉄の歴史といえばイギリスだからでしょうか、「鋼の錬金術師」の舞台は中世イギリスをイメージしているそうです。

日本では、たたら製鉄が盛んにおこなわれていました。日本刀づくりに利用されていました。ジブリ映画の「もののけ姫」ではタタラ場がでてきますよね。

最後に

結局、鋼とは、鉄と炭素の合金でした。なんてことはない、普段「鉄」といっているものが鋼だったのですね。材料についての教養をつけると、身の回りのものが面白く見えてきますね。

また、製鉄の流れを知ることができたので、製鉄所にも興味が湧きました。製鉄所の近くを通ることがあったら、高炉や熱風炉、転炉をみてみたいと思いました。工場夜景が一段と楽しむことができるような気がします。

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