コングレス未来学会議が面白い。この映画では、コンピューターグラフィック技術の進化と、進む仮想世界について、現代人へ問いかけるテーマだと感じた。技術進歩に対する我々人類の向き合い方を考えらせられるSF作品である。
今回は、科学的な視点も交えながら、コングレス未来学会議を紹介したいと思います。
まず、予告編が面白い。
実写に加えて、現代芸術のようなビビットな配色アニメーション、そしてテーマ曲であるforever youngが流れる。何を隠そう。映画を観るきっかけになったのは、この予告編である。
監督は、イスラエルのレバノン侵攻を描いた「戦場でワルツを」で知られるイスラエルの巨匠アリ・フォルマンである。
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「戦場でワルツを」が凄い観たくなった。実はまだ観たことがない。
もはやSFじゃない。コンピュータグラフィクス技術の未来を描く。
女優のロビン・ライトが全身スキャンを受けるようにオファーされる。ロビン・ライトは、女優としての作品選択の尊厳などで苦悩するが、結局、この全身スキャンのオファーを受けることになる。ちなみにロビン・ライトは実在の女優で、出てくるエピソードが現実の話と混ざっている。
予告編にもでてくる半円球のスキャナの中でさまざまな表情を撮影し、データとして保存される。歳をとることのないスキャンされたデータが、今後は女優として活躍することになるのだ。
さて、このCG技術はもはや未来の話ではない。すでに俳優たちが全身スキャンされ、CGだけで活躍する作品が出来始めている。例えば、アラジン(2019)のウィル・スミス演じるジーニーは、ほぼ全てがCGである。
もはやSFではなく、現実なのだ。
仮想空間と現実世界、どちらを生きるのか。真実とは何か。
この映画では、幻想世界こそが現実に置き換わっている未来が描かれている。ミラマウント社という製薬会社が幻覚剤を作っているのだが、その幻想剤を使うことで、人々は自分の想うままの場所でさまざまな姿で生きている。その姿は、マイケルジャクソンなどの有名人、ゼウスなどの神話の神々、アニメキャラクターなど。
タイトルにもある未来学会議は、全人類が幻想世界を世界中に広めることを宣言する会議なのだ。
ロビン・ライトはこの会議の暴動に巻き込まれてしまう、現実と幻想世界の境がわからなくなってしまう。そして未来で目が覚める。そこでは、人類が仮想世界を現実としている世界なのだ。そこで、ロビンライトはディランと恋をする。
これは、現代において、明らかにSNSやVR技術で進む仮想空間での人間の振る舞いについての問いかけだと言える。また、幻想世界で現実の姿も知らないままの人への愛、それは本当の愛といえるのか。なるほど、考えさせられてしまう。
ラスト3分が凄い。コングレス未来学会議の結末は?
この映画の結末が、意味深げである。ロビンは現実世界に戻ってきたが、息子アーロンは半年前に幻覚世界へ行ってしまったとわかる。幻想世界へいった者は、さまざまな姿になっているため、互いを認識できないのだ。
ロビンは絶望するが、最後に再び幻想世界へ戻る。そして、これまでの記憶をトレースして、アーロン姿のロビンがアーロンに声をかけて、映画は終わる。非常に意味深げなのだ。
これは僕の考察だが、ロビンは幻想世界で息子アーロンに再開する決意をする。そしてロビンは息子アーロンの姿になり、彼の人生を生きたのだ。そうすることで、アーロンが足取りを探した。そして、最後にアーロンに再開するのだ。
しかし、それにしては悲しいエンディングが流れる。喪失感と哀愁が心に残ってしまう。また、頭の中でテーマ曲の「forever young」がとても印象的に心に残っている。
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原作はレムの『泰平ヨンの未来学会議』
1971年に発表された。ポーランド人のスタニスワフ・レムの泰平ヨンの冒険シリーズである。主人公のヨンが未来学会議にて幻覚剤を飲まされて錯乱する。目を覚ました近未来では誰もが幻覚を見ており、幻覚世界こそが現実となっている。まさに、この映画の後半を描いている作品である。
いつか、読んでみようかな。