電源周波数の50Hz/60Hz問題

「電源って50Hzと60Hzのものがあるらしいけど、違いはなんだろう?東日本と西日本で違いがあるのはなぜ?誰か教えてくれないかなぁ」

そんな悩みを解消します!

今回は東日本と西日本での電源周波数の違いという話をしたいと思います。日本を大きく分けると東日本、西日本って、2つに分けたりしますよね。いろんな文化が違ったり、方言とかも東と西で結構大きく雰囲気も違ったりしますよね。あとは出汁の味が違ったり、うどんそばと言うか、そばうどんと言うかも違ったりとか、いろいろ東と西で違うものがあるんですけど、

なお、僕(@おとな理科のおたれ)の物理学の勉強歴は13年ほど。研究者として生計を立てつつ、サイエンス・エバンジェリストとして科学技術を世間に伝えるための教育活動もしています。こういったバックグラウンドなので、記事の信頼性が担保できるかと思います。

それではいきましょう!

東日本では50Hz、西日本では60Hz

電源周波数というのが東日本と西日本で違います。

まずは、そもそも電源周波数って何だよということなんですけど、電源周波数というのは家とかで家電を使うときにコンセントを差しますよね。

遠くにある電気を運ぶときには電流を交流の電気にすると損失が小さくなります。遠くから電気を送るときには直流じゃなくて、交流の電気に変えてやると無駄に電気を消費せずに家に届けられるんですね。そういうわけで家で使う電気も発電所から送られてくる電気も、交流の電気になっています。ここで交流というのは波になっているんですね。電流や電圧が波になっているんですね。

「おとな理科」YouTubeチャンネルで解説!

当サイト「おとな理科」ではYouTubeにて科学技術の解説動画を配信しています。本記事の内容についても動画化されていますので、ぜひご視聴してみてください!

YouTube解説「日本の電源周波数問題」

0:49 電源周波数とは

2:32 世界の電源周波数

3:35 日本の電源周波数(50Hzと60Hz)

4:06 東日本で50Hzと西日本で60Hzの理由

4:48 歴史の話1

5:43 歴史の話2 東京電燈

6:45 電源周波数の境界(フォッサマグナ)

7:42 変調(周波数変換)

8:13 新幹線の電源周波数問題(東海道新幹線、北陸新幹線)

ぜひ参考にしてみてください!

電源周波数とは

紹介する電源周波数というのはその波が1秒間あたりに変動する回数です。周波数というのが1秒間あたりにどれだけ振動するか、その振動数を表す物理量で、単位がHz(ヘルツ)です。ですから電源の電圧や電流が1秒間にどれだけ変動するかというのが電源周波数です。この電源周波数がなんと日本では東と西で違うんですね。普通、電気製品などを設計するときには周波数が全然違うと使えなくなっちゃいますから、国内で周波数を統一するというのは基本的な流れです。しかし日本では東日本と西日本で周波数が違うんですね。

電源周波数の統一

  1. 50Hz:東日本、イギリス、ドイツ、ロシア、中国、オーストラリア
  2. 60Hz:西日本、アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、韓国
「電源周波数」の画像検索結果

世界的に見てみても、やっぱりこの電力の周波数というのは統一されてきた歴史があります。もともと世界初の発電所、これはナイアガラの滝にできましたけど、このときの周波数は25Hz。他にもヨーロッパとかで133と1/3Hzとか、40Hzとか、いろんな周波数が使われていました。それぞれ、いろんな理由で周波数が選ばれていたんですけど、どんどん統一が進んで、現在では50Hzに統一している国と、60Hzに統一している国に分かれます。50Hzに統一している国はイギリス、ドイツ、ロシア、中国、オーストラリアです。多くのヨーロッパ諸国を中心に50Hzにしています。一方で60Hzを選択しているのがアメリカ、ブラジル、アルゼンチン、韓国です。北米、南米、アメリカ大陸を中心に60Hzが使われています。アジアでは、中国は50Hz、韓国は60Hzです。

日本における電源周波数の歴史

「浅草火力発電所」の画像検索結果

日本の電力の周波数を確認してみると、世界に合わせているのですが、なんと東日本と西日本で違う周波数なのです。東日本では50Hz、西日本では60Hzを選択しているんですね。同じ国のなかで違う周波数を選択しているという国は、インドやアフガニスタンなどの一部の国では50Hz、60Hzというのをどっちも使っているという国はあるんですが、世界的にみても珍しい国です。

ドイツ製発電機は50Hz、アメリカ製発電機は60Hz

理由は、かつて発電機を輸入したときに東側はドイツから、西側はアメリカから発電機を買ったからです。東日本で購入したドイツ製の発電機は50Hz、西日本で購入したアメリカ製の発電機は60Hzだったので、これが現在でも東日本では50Hzが、西日本では60Hzが中心になっています。発電機を50Hzで使っている国と、60Hzで使っている国からそれぞれ買ってしまったというのが、この周波数が東と西で違う原因になっているんですね。

もうちょっと詳しく説明します。電力戦争というのが19世紀にありましたが、終わってから交流発電機が日本へ輸入されます。東京にあった東京電燈(以下、東京電灯)という会社がドイツのAEG社(現在はシュナイダー・エレクトリック)から発電機を購入しました。このAEG社製の発電機が50Hzの周波数でした。一方で、大阪にあった大阪電燈(以下、大阪電灯)がアメリカのGE社から発電機を購入しました。このGE社製の発電機が60Hzでした。これらの会社がそれぞれ違う国の違う周波数の発電機を買ったということで、日本の電力周波数、電源周波数が50Hzと60Hzに分かれてしまっています。

ちなみにこの東京電燈、1882年に渋沢栄一が立ち上げた会社です。日本初の電力会社なんですね。この東京電灯や大阪電灯は電力会社の合併というのが始まって、5大電力会社になります。東京電灯はそのまま東京電灯で、大阪電灯は大同に入ります。そのあと1940年代前半に日本発送電というトラストになります。戦後には日本発送電はGHQによる財閥解体の対象になって、九つの電力会社に分かれています。

電源周波数の境目はフォッサマグナ

東日本と西日本、50Hzと60Hzとなっていますが、境界線がどこなのというのが気になりますよね。境界線はちょうどフォッサマグナと同じぐらいの場所にあります。静岡県の富士川から新潟県の糸魚川を結んだ線を境界にして東と西に分かれます。

電力周波数問題は気にしなくてよい?

日本では50Hz、60Hzと分かれているんですが、多くの家電で50Hzも60Hzも対応していますよというふうに、どちらでも使えるようになっています。それでも50と60、違う周波数だといろいろ不便なこともあります。

周波数がよく問題になるのはモータです。モーターって、電源周波数のその交流を上手く利用して動かしているモータ(同期モータ)などもあります。違う周波数のものが入ってくると困るんで、周波数変換という技術もあります。これが整流器とインバータを使った周波数変換器です。ある周波数が入ってきたときに整流器を使って直流に換えて、そのあとインバータを使って、もう1回交流に換えてやるという技術です。このときにもともと入ってくる交流周波数と出てくる交流周波数を換えることで周波数の変換ができるんですね。

さて、この周波数変換は身近なところで大活躍しています。その例として、新幹線の周波数問題を紹介します!

新幹線の周波数変換

「新幹線」の画像検索結果

日本の電源周波数と大きく関わっているのが新幹線です。新幹線はこの交流電力というのを上手く利用するモーターを使って走っていますよね。このうち、東北新幹線など東日本のなかだけで動いている新幹線や九州新幹線など西日本のなかだけで動いている新幹線というのは、特に問題はないわけです。問題になってくるのは東海道新幹線ですよね。東海道新幹線は東京と大阪を結んでいるように東日本から西日本のどちらの地域も通っています。

東海道新幹線は変電所

東海道新幹線ではどのように周波数の問題を解消しているのでしょうか。50Hzの電源を使って動かしていたモーターが急に60Hzの電源に切り替わったら困ってしまいます。東海道新幹線がどうしているか紹介します。

モーターは全部60Hzで動くようにしています。安定して同じように走行できるようにしているのですね。では、50Hzの東日本ではどうするのというと、変電所を設けています。変電所で50Hzを60Hzに換えて、車両に送電しています。ですから東海道新幹線の線路沿いにはいくつかの変電所というのが設けられています。ちょうど富士川を抜けた沼津のところに変電所があって、新幹線からもちらっと見えたりします。

あたり前のように乗ってしまう新幹線ですけど、実は陰でこんな難しい技術問題と戦っていたんですね。というわけで、新幹線ではこの電源周波数の違いというのが問題になっていましたが、東日本には変電所を設けて、60Hzに周波数変換して車両に送電していたのですね。

東日本と西日本をまたがっている新幹線は東海道新幹線だけではないんですね!

北陸新幹線は車両に周波数変換器

2015年に開通した北陸新幹線もこの東日本、西日本をまたがる路線です。この北陸新幹線でもやっぱり60Hzの電源に直してモータでは使っているんですが、東海道新幹線のように変電所を設けてはいません。北陸新幹線では新幹線本体に周波数変換器というのを載せて車両内で周波数を換えているんですね。

東海道新幹線と北陸新幹線でなぜ方式が違うのかというと、技術の進歩です。東海道新幹線が開通したのは東京オリンピックが開催された1964年でした。北陸新幹線が開通したのは2015年で50年のあいだに技術的な発展が遂げられて周波数変換器を新幹線に載せられるようになったというわけですね。

このように電源周波数の違いを学びつつ、新幹線の技術やそこにまつわる技術進化というのも見て取れるわけです。新幹線にまつわる科学技術も面白いですね!

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最後に

今回は東日本と西日本での電源周波数の違いを紹介しました!普段、僕たちは50Hz、60Hz違いを気にせず、東日本にいても西日本にいても同じ家電を使っていますね。コンセントをよく見てみると、この家電は50でも60でもどっちでも使えますと書いてあります。そう、僕たちの知らないあいだにこういう家電もどちらでも使えるようになっていて、気にせず使えるありがたい状況になっているんですね。

以上、今日は電源周波数の話でした!