量子力学の初心者におすすめ教科書【必携】

「量子化学や量子力学の勉強を始めたいなぁ。初学者にオススメの本はなんだろう?第一歩として概要を理解できる本を知りたいなぁ。」

こういった悩みに答えます。

本記事では、量子論の数式無しで楽しめる初心者にオススメな本を紹介しました。数式を追って教科書を追ったとしても、全体を見渡さない限り、物理がわかったとは言えません。式を追うことと全体の見渡しがセットになると価値を生みます。

なお、僕の物理学の勉強歴は12年ほど。
研究者として生計を立てつつ、サイエンス・エバンジェリストとして科学技術を世間に伝えるための教育活動もしています。こういったバックグラウンドなので、記事の信頼性が担保できるかと思います。

というわけでさっそく見ていきましょう。

量子力学の初心者におすすめ教科書【必携】

「量子力学(Ⅰ)」小出昭一郎 (基礎物理学選書5A)

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 他の参考書に比べて、間違いなく敷居が低い教科書です。歴史や考え方についてもじっくり解説があるので、理解しながら勧められます。波動力学といわれるように波動方程式を用いて計算を進めていきます。

 初めて量子力学を学んだのはこの本でした。他の教科書たちは導入部からアクセル全開なのですが、この教科書は敷居を低く丁寧な導入になっています。重要なポイントを着実に抑えていく構成になっているので、量子力学の教科書として王様だと思っています。

中級者におすすめの教科書

「現代の量子力学(上) 第2版」J.J.クライ (物理学叢書) 

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ブラケットを用いて量子力学を学べます。海外の教科書はブラケット記法で進める教科書が多いので、世界標準の学習をするという視点でも勉強になりそうです。いわゆる行列力学の立場で量子力学を学んでいくことになります。

桜井純(Jun John Sakurai)という日本人物理学者が書いた世界的な名著です。留学生としてアメリカに渡り理論物理学を学んだ経歴のようです。日本語版では上下巻からなりますが、上巻執筆後にお亡くなりになったそうで、下巻は桜井さんの彼の同僚たちが彼のメモをもとに執筆したそうです。

いきなり「シュテルン=ゲルラッハの実験」が登場し、スピンの説明があります。古典力学との対比で読者の興味をかきたてます。その後、時間発展演算子が導入され、シュレディンガー方程式が導出されます。また調和振動子を昇降演算子を用いて解いていきます…と構成が秀一です。2冊目として読むと、全く違う切り口で進むので、新鮮に量子力学を学べると思います。

「量子力学I 」猪木慶治 (KS物理専門書)

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演習問題もたくさんあるため、ブラケット記法で手を動かして理解していくにはとても良い教科書です。やはり計算になれるという意味で扱えないといけませんね。大学院の入試問題などではブラケット記法の演算が多く登場しますので、この教科書を通して学んでおけば怖いものなしです。

以上が、僕がおすすめする教科書です。さて、ここからは教科書選びと並んで重要な教科書の読み方についてです。余計なお世話かもしれませんが、少し読んでもらえたらと思います。

ただ読めばいいのではない専門書の賢い読み方【重要】

専門書を読むコツを紹介します。理系の道で生きている僕が長年かけて再確認した専門書を読む方法論です。よかったら参考にしてみてください。

よくある失敗パターンは、「前のページからしっかり学んでいく→計算もしっかりこなし知識を完璧にする→1冊を成し遂げる」という気持ちで始めたものの途中で挫折してしまうパターンです。ストーリーを知らないと、今やっている計算が何のためだかわからずに、モチベーションが下がってしまいます。しまいには、教科書を捨てることになるでしょう。

  • やること①:専門書の全体を見渡す
  • やること②:じっくり読む
  • やること③:繰り返す

たったこれだけです。中級者、上級者になるにつれて、特殊関数など、高度な知識も必要になりますが、最初から欲張りすぎると、計算に追われて自分が何をやっているのか迷ってしまうだけです。まずは最低限の情報をインプットしてから計算を始めること。これが大切です。

やること①:専門書の全体を見渡す

専門書を読む際には、全体の流れを掴むことができるかどうかがポイントになります。まずは、目次を読み、キーワードだけ頭に入れます。目次に出てくるキーワードがどんな意味かわかるかどうか確認しましょう。知っている単語があれば、自分で説明してみましょう。そして、本文だけをひたすら読みます。パラパラとめくって良いです。数式は無視して良いです。流れをなんとなく掴むのです。最後に、再び目次を読みます。おおよそどんな内容か説明してみましょう。ここまでやれば専門書を読む準備は万端です。

やること②:じっくり読む

次に、一つ一つの数式を導出できるようにしましょう。ただし、数学が高度であれば、一度飛ばしてしまうことも手です。もう一周やればいいのです。少しずつ数学のチカラもついていきます。重要な式がどれか確認していきましょう。そして、数式を説明できるようにしましょう。どうやって算出したのか。

やること③:繰り返す

次は、満足するまで全体を繰り返しましょう。2周すれば大体学問の体系がわかってきます。3周もすると上手く説明できるくらいまで成長できます。5周もすれば、量子論をマスターできているというわけです。

最後に

今回は量子力学の教科書を紹介しました。ぜひ、量子力学を学習するきっかけになれば幸いです。

数式を使わない量子力学の本も紹介しているのでよかったら参考にしてみてください。量子力学を学び始める前に読むとモチベーションが上がるかもしれません。

数式を使わない量子力学の本